すみっコぐらしとBUMP OF CHICKEN

すみっコぐらしの映画を見てきた。

「夢ってなあに?」とキャッチコピーにあるように、この映画は”夢”が主題になっているのだけれど、夢を叶えることではなく、夢を抱くことそのものを肯定してくれるとてもやさしい映画だった。

夢や理想を抱くことは同時に劣等感と向き合うことだと思う。「もっとああなれたらいいのに」「ああだったらよかったのに」と自己を否定し、もしもの姿を願う。それが夢であるとも言えるだろう。
夢を抱くことは勇気が伴う。もしそれが叶わなければ大きな挫折感を味わい苦しむことになる。実現することができなかったという悔やむ気持ちが生まれ、「失敗をした」という烙印が押されてしまう。それならば夢など見ない方が楽だと、夢を見ることを諦めたり手頃に叶えられそうな範囲で理想を掲げるようになった人は恐らく沢山いる。
そんな人にこそ胸の奥底に刺さる内容なのだと思う。

この映画は夢を叶えることだけを肯定するのではない。夢に向かって努力を重ねても失敗してしまう、そんな姿もその人らしさを表す素敵なものなんだと伝えてくれる。上手くいかなくてもいい、不器用でもいいんだとそっと心に寄り添ってくれる。 

https://embed.music.apple.com/jp/album/small-world/1590799862?i=1590799865

そんな映画のメッセージを更に強めたのがこの主題歌だった。

特に2番のサビの

叶わないままの夢はどんな光よりも綺麗で
変わりたいのに変わりたいままだから苦しくて

という歌詞に心臓をぎゅっと掴まれたような気持ちになった。この苦しみがわかるバンドだから、キャラクターだから、私は彼らが伝えるメッセージにこうも心を動かされたのだ。

BUMP OF CHICKENの曲はどれも少し後ろ向きで、底抜けに明るくなんていられない人達の味方をしてくれる。心の奥底に隠して見ないふりをしていた気持ちもBUMPの曲は見つけてくれる。そしてがむしゃらに応援をするのではなく、悩みや苦悩を理解して共感してくれる。そこには上手く生きれない人達を肯定し受け止めてくれる優しさがある。
すみっコぐらしのキャラクター達は皆哀愁が漂っている。北から逃げてきた子、食べ残された子、正体を隠している子、本当の自分がを探している子、体型を気にしている子、などちょっとずつネガティブな要素を持っていて控えめな子達だ。そんな薄暗いところが大勢の共感を得て、圧倒的な支持を集める理由になっている。
両者とも、影にいる人間の味方なのだ。

上手に生きていきたいけどそんなに器用にはできなくて、いつも劣等感が身を纏っている。過去に負った傷を抱えながらも不器用に前に歩んでいく。そんな人に向けてそれでも良いんだと、一緒に頑張ろうと、優しい声をかけて勇気をくれる。すみっコぐらしとBUMP OF CHICKENはきっとこれからも多くの人を救うだろう。